治るということ

「治る」って、どういうことでしょうか?

心療内科を受診される方の多くは、「このつらい症状が治ってほしい」という思いを抱えていらっしゃいます。

しかし、ここで私たちが一緒に考えたいのは、「治る」という言葉の本当の意味です。

これは一人ひとり、まったく違うものだと私は考えています。

たとえば、不眠症でいらっしゃる患者さん。

お薬を使い始めると、多くの場合、夜眠れるようになります。この時点で「もう日常生活で困らないから治った」と感じる方もいれば、「薬を飲んでいるうちは治ったとは言えない。薬なしで眠れて初めて治ったと言える」と考える方もいらっしゃいます。

後者の場合、私たちは薬で症状を軽くしている間に、根本的な改善を目指す必要があります。

不眠の原因となっている生活習慣を見直したり、ストレス要因を減らしたりするお手伝いをします。

眠れないこと自体が苦痛で、まずはそのつらさを取り除きたいという方もいれば、「眠れなくても、日中は困っていないからもう大丈夫」と感じて、それ以上治療を必要としない方もいらっしゃいます。

ゴールは人それぞれ

私たちが目指すゴールは、患者さんご自身が決めるものです。

「普段は薬なしで大丈夫だけど、大切な用事があるときだけは念のためにお薬を使いたい」という方もいらっしゃいます。これも、その方にとっての「治っている」状態と言えるかもしれません。

もちろん、「どんな時も薬に頼らず眠りたい」という強い思いを持つ方もいらっしゃいます。

このように、目指すゴールが違えば、治療へのアプローチも当然変わってきます。

一人ひとりの「治る」の定義を共有し、同じゴールに向かって一緒に歩んでいくこと。

それが、心療内科の治療において、最も大切にしていることだと私は思っています。

あなたの「治る」は、どんな状態でしょうか。ぜひ聞かせてください。