限られた情報のなかから、現在の症状を抽出し、原因を想定して、治療を考え、予後を予測するといった行為を私は診断するということだと思っています。例えば患者さんが「最近しんどいです」「やる気がでないです」など訴えがある場合は医学用語に置き換えると倦怠感や意欲低下という症状になります。倦怠感や意欲低下はうつ病の代表的な症状ではありますが、その症状があるからうつ病と診断するわけではありません。その状態がどれくらい続いているのか?働きすぎているのではないか?人間関係で気疲れをおこしてないか?夜更かししすぎで睡眠不足になっているのではないか?身体的な病気があるのではないか?アルコールの飲みすぎではないか?などなどいくつもの原因を想定していきます。患者さんによってはおそらくこれが関係していますというのが絞りやすいものもあれば、いくつもの要因があり絞り切れない場合もあります。そういった場合はまず、すこし休んでみましょう、お酒もいったんやめてみましょう、睡眠時間を確保してみましょうなどできそうなことから体調や行動を整えていくことからおすすめします。例えば重い荷物を背中に担いで全速力で走り続けている人が、「しんどい」といってもどこが悪いのかわからないように、診断を進めていくためにはまずは休養と身体的及び精神的負荷を軽減することが大切なことが多いのです。