楽(らく)よりも楽(たの)しむを目指す

ある患者さんからメッセージをいただきました。最近は少しづつ『楽しむこと』を目指しているといった内容でした。担当医としてはこのようなメッセージをいただくととても嬉しくなります。

 一般に患者さんは苦しみを軽くしたい、すこしでも楽(らく)になりたいと思い、病院を受診されるものです。しかし恐怖症や強迫性障害の行動療法は『がまん療法』ともよばれ、苦手としているもの避けたいものや不快感に対して我慢しながらも自ら積極的に曝露していきます。またその時生じた不快感を軽減するために行う行為をしないように我慢します。とても苦しい治療法であり、おそらく治療をするよりも治療しないほうがその時点では楽(らく)に感じるかもしれません。当然ですがこのような治療を受けたくないとおっしゃる患者さんもおられます。少しでも楽(らく)になりたいと思って受診している患者さんがより苦しみを感じる治療を選択しないのもわかる気がします。

 ではいったいどういった患者さんが苦しい治療にいどまれるのでしょうか。おそらく何のために治療をするのか、治療してどうなりたいのかがはっきりしている方が多いように思います。症状を無くすこと、苦痛を軽減すること、楽(らく)になることが治療の目的ではなく、何らかの目的を果たすために苦痛を伴うであろう治療を行っていく人がおおいのではないでしょうか。メッセージをくれた患者さんも楽(たの)しむことを目指して、その目的を達成するために今後もいろんな苦痛にもたちむかっていって欲しいと期待しています。楽(らく)を目指すとなかなか楽(らく)になれませんが、楽(たの)しむを目指してより強い恐怖を引き受けることをやりきれば、それよりも少し軽い恐怖を引き受けることは結果的に楽(らく)を感じれるものじゃないかなと思っています。