嫌な癖のなおしかた


誰にでも、ついついやってしまう「嫌な癖」があるものです。爪を噛む、髪をいじる、貧乏ゆすりをする、夜更かししてしまう、暴飲暴食してしまう…挙げればきりがありませんね。こうした癖は、多くの場合、無意識のうちに行われています。しかし、それが習慣化し、ご自身や周囲の人にとって不利益になったり、不快感を与えたりするようになると、「どうにかしたい」と思うのは自然なことです。

では、なぜ癖は生まれるのでしょうか? そして、どうすればその癖を直すことができるのでしょうか? 今日は、心療内科医の視点から、嫌な癖の直し方についてお話したいと思います。

なぜ嫌な癖は生まれるのか?

癖が生まれる背景には、いくつかの要因が考えられます。

 * ストレスや不安の解消: 多くの癖は、ストレスや不安を感じた時に、その不快感を和らげようとする行動として現れます。例えば、爪を噛む行為は、緊張を和らげるための自己刺激の一つとして考えられます。

 * 退屈しのぎ: 何か集中するものがない時や、手持ち無沙汰な時に、無意識に特定の行動を繰り返してしまうことがあります。

 * 習慣化: 最初はたまたま行った行動でも、それが繰り返されるうちに脳が「これはいつものことだ」と認識し、意識せずとも行ってしまうようになります。

 * 自己肯定感の低さ: 自分に対する自信のなさから、自己を傷つけるような癖(例:髪を抜く、肌を掻きむしるなど)につながることもあります。

 * 特定の行動との結びつき: 特定の場所や状況(例:ソファーに座るとスマホを触ってしまう、イライラするとお菓子を食べてしまう)と、癖が強く結びついていることも少なくありません。

嫌な癖を直すための具体的なステップ

癖を直すには、まずその癖を意識することが第一歩です。そして、以下のステップを試してみてください。

1. 癖を「見える化」する

自分がどんな時に、どんな場所で、どのくらいの頻度で癖をしてしまっているのかを記録してみましょう。手帳にメモしたり、スマホアプリを活用したりするのも良いでしょう。「見える化」することで、自分の癖のパターンが客観的に把握でき、対策を立てやすくなります。

2. きっかけとなるものを特定し、排除する(または変更する)

癖をする直前に、何か「きっかけ」となるものはありませんか? 例えば、

 * 場所: 自分の部屋にいる時、職場にいる時

 * 時間帯: 夜、食後

 * 感情: ストレスを感じた時、暇な時、疲れている時

 * 特定の行動: スマホを見ている時、テレビを見ている時

これらのきっかけを特定し、可能な限り排除する、あるいは変更することを試みましょう。例えば、スマホを触る癖があるなら、決まった時間以外は手の届かない場所に置く、などです。

3. 代替行動を見つける

癖をしそうになった時に、代わりにできる別の行動を準備しておきましょう。これは、悪い癖を良い癖に置き換える作業です。

 * 爪を噛む癖があるなら、代わりにハンドクリームを塗る、ストレスボールを握る、ガムを噛む。

 * 夜更かししてしまうなら、決まった時間に照明を落とし、読書や軽いストレッチをする。

 * お菓子を衝動的に食べてしまうなら、代わりに温かい飲み物を飲む、歯を磨く。

代替行動は、できるだけポジティブで、その癖では得られない満足感が得られるものを選ぶと成功しやすいです。

4. 小さな成功体験を積み重ねる

いきなり完璧に癖をなくそうとするのは難しいものです。まずは、「今日は〇〇しなかった」という小さな成功を意識的に数え、自分を褒めてあげましょう。 たとえ一日できなくても、次の日にもう一度挑戦すれば良いのです。焦らず、一歩ずつ進んでいくことが大切です。

5. ストレスマネジメントを心がける

多くの癖はストレスが原因で引き起こされます。日頃から、ストレスをため込まないような工夫をすることが、癖の改善にも繋がります。

 * 適度な運動を取り入れる

 * 質の良い睡眠をとる

 * 趣味やリラックスできる時間を作る

 * 友人や家族に相談する

6. 周囲の理解と協力を得る(必要な場合)

もし、癖がご自身の生活に大きな影響を与えている場合や、一人で解決するのが難しいと感じる場合は、信頼できる家族や友人に相談し、理解と協力を求めることも有効です。